主催:長谷工コーポレーション  後援:株式会社 新建築社

最新情報

2020年2月3日
「2次審査結果発表」、「審査講評」ページをアップしました。
2019年12月13日
「1次審査結果発表」ページをアップしました。
2019年11月25日
応募登録受け付けを締め切りました。
2019年7月22日
「テーマ座談会」ページをアップしました。
「HASEKO ARCHITECT DESIGN FORUM 2019」ページをアップしました。
2019年7月12日
応募登録受け付けを開始しました。

 

審査委員長 隈研吾

kuma

今年は「多世代,多国籍で生まれ変わる集合住宅」というテーマでしたが,審査を通じて皆さんがこの課題に興味があるということがわかりました.応募案を見ると,現代的なシェアのようなアイデアが多く,多様な人と住んでみたいという思いを感じ取れました.1次審査の段階で応募案を見た時,バリエーションが多いように感じていたのですが,2次審査でプレゼンを聞くと4案のアイデアが似ているように感じました.「還る/返る暮らしと新しい毎日」は大変重要なテーマに触れていますが,日常的なリアリティからあまりにも話がかけ離れ過ぎていて童話のように思えてしまいました.「YO JOH AN―余剰庵」はバラック的な四畳半の客間が設けられた案です.よくあるマンションの片廊下は人を寄せ付けないところがありますが,そこに中間領域のような少し柔らかい客間があるだけで,多国籍な人を受け入れる優しさが出るような気がして,集合住宅のイメージが変わるのではないかと思いました.

 

審査委員 乾久美子

inui

課題を検討している時に,われわれ審査委員は多世代,多国籍の人びとが集まる集合住宅というものが,このコンペを通して発見されるだろうと期待したわけですが,全体的に「多世代,多国籍」に対してきちんと応えている案が少なかったように思います.特に多国籍の人たちと共に住まうということであれば,劇的に違うことが起こるかもしれないのに,あまり想像を広げて考えていなかったのかもしれません.その点で「世界家産―学びの集合体」は,「多国籍」の点について最もよく考えられていました.世界にはさまざまな住まいがあり,住まいこそが人が多くのことを学ぶ対象なのだという発想が面白かったです.ただ,肝心の住まいの集め方についてのアイデアが乏しく,そこにこそこの案の面白さがあるはずなので,もったいなく感じました.「還る/返る暮らしと新しい毎日」はファンタジーとして異常な世界観が構築されていて面白いと思いました.しかし,「多国籍」についてあまり深く考えられていなかった点が残念でした.

 

審査委員 藤本壮介

fujimoto

2次審査に進む4案を選んだ時,それぞれ面白い案だと思っていたのですが,プレゼンを聞いて,こうしてみんなで議論をすることで,各案の面白さの正体や,その先の可能性などがしっかり見えてきて,より面白く感じられました.それは公開審査のよさですね.「世界家産―学びの集合体」は,建築とは風土に合わせてつくられるモノですが,この案はあえていろいろ混ぜ合わせることで50年,100年後に独特なハイブリッド空間が生まれそうで,そのスケールの大きなコンセプトに魅力を感じました.「部屋も歩けば人にあう」は他の案に比べて具体的なコミュニケーションのストーリーを考えていましたが,考え方がかなりコンセプチュアルなので,アイデアが空回りしかねないと感じました.「YO JOH AN―余剰庵」は,客間が外に取り出されることで家の中はどうなるのかまで考えてほしかったです.「還る/返る暮らしと新しい毎日」はドローイングは素晴らしいのですが,土と建築の接し方,土と人の接し方が少し単調に思いました.

 

審査委員 池上一夫

ikegami

過去の審査でも「多世代」が住むことを想定した集合住宅の提案は多くありましたが,今回はさらに「多国籍」がテーマに入っているので,審査する上では特に多国籍な住民との交流について,どう提案されているのかについて注目しました.さまざまな国の生活や建築,さらには食文化を含めた異文化の学びをテーマにした案が多く,入賞案も共通してそのような点について考えられていたと思います.「部屋も歩けば人にあう」は,屋台のように部屋の一部を街のさまざまな場所へ持ち出すことで,それが多国籍文化や生活スタイルを流出するというアイデアが面白かったです.「YO JOH AN―余剰庵」も住宅から切り離れた客間を考えていた点はよかったのですが,住戸と客間の関係性が希薄だった点が残念でした.「世界家産―学びの集合体」は,世界の建築スタイルが集合しており,そこで繰り広げられていく生活は面白そうでした.その他の受賞作品もよく考えられており,感心させられるものが多くありました.受賞された皆様,おめでとうございます.

 

ゲスト審査委員 田中元子

ikegami

最優秀賞,優秀賞の4作品はそれぞれとても興味深くありつつも,あとひとつ何かが追加されることでアイデアが補完され,よりリアリティを持つことができるのではないかと思いました.「世界家産―学びの集合体」は一見デザインコラージュのように見えたのですが,地球という大きなスケールでの暮らしのストーリーが想像でき,面白い案だと思いました.世界各国の建築スタイルや人の知恵が集まった中で生きることで,自分の知恵もそこで発生するのだと思います.これまでの日本人の暮らし方や常識は変わっていくでしょうし,それを誘発するデザインになっていました.「還る/返る暮らしと新しい毎日」も面白いアイデアでしたが,自分たちが提案した内容,この案では土についてもっとマニアックになってほしく,土についての知識が断片的で物足りなさを感じました.もっと狂気的に土についての提案をしてもよかったのではないでしょうか.