共催:三井不動産レジデンシャル 新建築社
応募要項 応募要項
2017年7月26日
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2017年7月11日
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審査講評


古谷誠章(建築家/早稲田大学教授)

内藤廣写真

今年のテーマである「人のつながりを呼ぶ住まい」には、埋立地のもともと地縁的コミュニティの稀薄な場所に建つ高層マンションに、人びとのどんな触れあいが求められるのか、またどのような住戸プランがそれを可能にするのか、という現代の都市居住を考える上で、とても重要な本質的な問いが含まれている。住棟を丸ごと設計するのならば、共用部の考え方や外部空間などでもアイデアを見出すこともできるだろう。しかし、このコンペでは一住戸のみをもって答えを出さなくてはならない。なかなか一筋縄ではいかなかったはずだ。しかも東南角部屋とはいうものの、東側窓サイドでは同じ他住戸との見合いも発生するし、住戸内のボトルネックとなっている柱やPSも大変厄介だ。 そんな中で最終に残った各案は、それぞれに意欲的な提案内容があったが、同時にどれもがまだまだ解決すべき難点も多々あるという状態で、審査は近年にない混戦模様となった。僕自身がこの困難な選択の中で、最優秀賞となった高田+冨永+伊藤案を推したのは、この案が唯一、陽光と風を感じる「豊洲という土地柄」に対してポジティブに、かつ新たな価値観を創出しようとしているように感じたからだ。「アーバン・リゾート・ライフ」などと言うと、安手の広告のようになってしまうが、この案が導くイメージの先には、言葉倒れにならない、そのあり得べき姿が見える。すなわち都心に直近の利便な土地にいながらにして、開放感のある余暇の生活感を共有できる。それが人のつながりの原点たり得るのではないか。共有する仲間は当の家族や離れて暮らす親族・友人はもちろん、このマンション内の隣人たちや、近接する普通のマンションの住人たちをも呼び寄せるかもしれない。今後改善しなくてはならない細かい点はたくさんあるが、ぜひこの原点を堅持した実りある成果を期待しています。


光井純(建築家/光井純アンドアソシエイツ,ペリ クラーク ペリ アーキテクツ ジャパン代表)

光井純写真

今回のコンペでは、最終8案に残ったデザインがどれも個性豊かで、審査委員の意見も分かれてしまい、最終の投票を行っても決まらない事態となった。結果的に、時間を超過して議論を行い、改めて最終投票に持ち込まれるという初めてのケースであった。 今回の課題は、シャフトスペースや構造の制約が厳しくコンペ参加者は相当格闘されたようだが、そうした条件を逆手に取って斬新なアイデアも多く生まれたと思っている。その中でも宮垣+三浦案はボトルネックになっている柱周りの空間を、ふたつのL字型の家具で連続させるという斬新な考え方で解いている。家具には大きな開口部が組み込まれて、背後の空間への連続性も巧みに解かれている。しかしながら寸法の抑えが不十分で、実行力が疑問視されたことで佳作となった。高田+冨永+伊藤案も、ボトルネックとなっている玄関のパイプシャフトの左側を通って土間に入るという大胆な案になっている。窓際の空間と全体の中心にある縁側空間というシンプルな構成である。縁側と壁の間に配置された寝室は、壁側に向かって拡張可能であると判断されて、十分な広さを確保できるという判断があり、長い議論の末に最優秀賞を獲得した。柿澤+下門案はシンプルでとてもセンスのある案であったが、空間と空間の間のつながりの仕掛けにさらなる工夫が必要であった。特にプライベートリビングと主寝室の関係は緩やかでも構わないと思われた。池田案もシンプルで力強い構成はとてもよいと思われたが、玄関からの長い廊下はやや冗長に感じるし、中央空間と狭い縁側空間との寸法のバランスもやや強引な感は否めなかった。 当コンペも第9回を迎えて成熟度を増し、相当密度の高いものが集まっていると感じる。その中で今回の最優秀案も、さらに今後検討を重ねて新しい居住空間のプロトタイプを生み出すものと確信している。


渡辺真理(建築家/法政大学教授)

渡辺真理写真

今回の公開2次審査は大混戦だった。ほとんどの入選者が実施図面レベルの平面詳細図、断面詳細図と住戸詳細模型を準備してきたが、それにより皮肉なことに計画案の弱点が露わになったのである。1次のプレゼンテーション図面とは異なり、詳細図は微妙な寸法や材料と材料の取り合いが明らかになる。その結果、どの案も何らかの問題箇所が露呈し、審査側はその問題点を今後修正し解決できる提案であるかどうかまで深読みせざるを得ないことになったのである。今回は提案住戸の平面が旗竿型で、さらに上階からのPSが2カ所で貫通していることも応募側にはハードルとなった。 もうひとつある。「個室=寝室の失権」とでも呼び得る事態が、今回の提案に共通していることである。各案を総覧すると以下のようになるだろう。 池田案:広さはあるが廊下状の寝室、開放型/柿澤+下門案:主寝室と予備室、予備室は半開放型/高田+冨永+伊藤案:バンクベッド、半開放型/高橋案:棚で廊下と接続、開放型/濱田案:折戸、半開放型/宮垣+三浦案:廊下状、開放型/西川案:廊下状、開放型/赤﨑+五味案:3寝室引戸、半開放型 一般的な分譲マンションの住戸が個室分割主義なのと好対照である。この現象が「寝室の境については……日本の家というのは、本来、パァパァじゃないか」(『集合住宅をユニットから考える』より、本城和彦氏の発言)のレベルまで考え抜いた末の提案なのか、あるいは単にアンチ個室主義なのかは直ちには分からないが、全員に共通しているところが微妙である。これはどういう方向性を示しているのだろうか? 各案とも「人とのつながり」についてはそれぞれアイデアがあったが、とりわけ、池田案、柿澤+下門案、濱田案、宮垣+三浦案は納得のいくものだった。最優秀となった高田+冨永+伊藤案には植物のある暮らしというイメージの強さでは他に抜きん出ていた。このイメージの力を実施案にも活かしていただきたい。


井上徹(三井不動産レジデンシャル取締役専務執行役員)

鈴木健写真

今回で第9回目を迎える当コンペは、時代のニーズにあった「デベロッパーと建築家・デザイナーとの新しい関係」を見出すことにより新たな快適さを感じていただける「住まい」の創造を求め、新建築社と共催してまいりました。今回は新しい住まい方を想起させる豊洲を舞台に「人のつながりを呼ぶ住まい」をテーマとして、社会に対してオープンなこれからの住戸とはどんなものであるべきかについてご提案をいただきました。具体的なターゲット設定がない点は難しかったと思われますが、今回も多くの方がたにご応募いただき、大変喜ばしく思っております。この場を借りて御礼申し上げます。 今回の入賞作品はどの案も甲乙つけがたく混戦になりました。三井住空間デザイン賞に選ばれた高田+冨永+伊藤案については豊洲の場所性をうまく活かした上で、住まう人の個性を表現した提案がなされていたように思います。 このコンペの最大の特徴は受賞作を実際の住戸として建築し、商品として販売を行うことにあります。そのために審査するに当たっては提案の斬新さという観点だけでなく、現実の建築を行うにあたっての現実性、マーケティング面から見た顧客アピール性等の観点も加味いたしました。今回の受賞作品もこれから受賞者と共に実際の住戸としての姿を検討させていただき、「パークホームズ豊洲ザレジデンス」にて皆様に披露させていただく予定です。 今後も三井住空間デザインコンペを通じ、時代のニーズに合った「くらし」をテーマにマンションが語られる視点を想起し続け、建築家の方がたと共に、常に時代に呼応する「すまいとくらし」を提案してまいりたいと思います。