第2回住空間デザインコンペ
最優秀賞モデルルーム
パークタワー品川ベイワード
(仮称・港区港南3丁目計画Aタイプ住戸ユニット)
設計/石川博将・大平佳規
第2回住空間デザインコンペ概要
『第2回住空間デザインコンペ』は、時代のニーズにあった「デベロッパーと建築家・デザイナーとの新しい関係」を、また「新しい都心居住の可能性」を探るひとつの機会として、「パークタワー品川ベイワード」(仮称・港区港南3丁目計画)の住戸ユニットを対象に開催された。応募登録1,255件、応募作品438点の中から、青木淳、妹島和世、光井純、磯辺真幸の4氏による審査の結果、石川博将氏・大平佳規氏が最優秀賞を受賞した。石川氏・大平氏設計によるモデルルームは2004年4月下旬に完成し、同年7月にWANGAN LIFEミュージアム(東京都江東区有明3-1-7)にて一般公開された。
Q&A: 設計者に聞く
- Q1. 提案のコンセプトについて教えてください。
- A.この住戸は10階から20階付近に位置し、南側と西側に開口面とバルコニーがある角住戸です。西側は運河に面していることもあり、どちらの方向も視界をさえぎるものがなく、東京の街並みが一望できます。そういった魅力をどのように生かせるかということを考える中で、「住空間が内部から外部へ連続的につながること」、「外部を内部空間に取り込むこと」といったテーマが生まれました。具体的には、南西側にワンルームの大きなスペースを確保することで、南と西の開口面を生かした開放的で心地よい空間をつくり、そこを家族が一緒に過ごす場所にしようと考えました。広いバルコニーには、室内の床面が続いているかのようにウッドデッキを設けることで、バルコニーと室内が一体となったテラスのような空間にすることを考えました。光や風が隅々に行きわたり、視覚的にも感覚的にも外部へと広がるような住空間をイメージしました。
- Q2. 住まい手と空間のかかわりについてどのようなことを考えましたか?
- A.住まい手が、暮らし方を自由に創造できるような空間をつくりたいと考えました。空間によって暮らし方が固定されることなく、暮らしの中にも「つくる」という要素が含まれるようなつくり方や素材の選び方をしました。住まい手が自分たちのスタイルで自由に暮らし、その中で暮らし方の可能性をさらに広げてくれたらと思います。
- Q3. 家具について、かたちや質感、空間との関係をどのように考えましたか?
- A.家具によって空間の使い方を固定してしまうのは本意ではないのですが、ひとつのモデルタイプとして提案しました。暮らしの中で、生活のシーンに応じてさまざまな使い方ができるように、また空間同様、住まい手が使い方を創造できるようなものになることを意図してデザインしました。リビング、ダイニング、キッチンスペースの家具は、空間の広がりを疎外しないようなかたちにし、控えめな白っぽい色で統一しました。主寝室のベッドは、空間が広く見えて落ち着きのあるものに、子供部屋の家具は机や書架が一体となって間仕切りとしても機能します。
- Q4. 最優秀賞受賞からモデルルームが完成するまでのプロセス、また印象に残る出来事があれば教えてください。
- A.はじめにマンションをつくるうえで必要な仕様規定や要求性能の説明を受けました。その後は、指摘を受けた問題点に対する再提案と、素材などの提案を行い、三井不動産と実施設計をする三井住友建設が実現可能かどうか検証するという作業を繰り返し行いました。印象に残ったことは、コンペの時点で具体的に考えていなかった家具について深く考える機会を得て、デザインをさせていただけたことで、貴重な体験でした。
- Q5. 今回のコンペに参加して、実際にモデルルームをつくった感想はいかがでしたか?
- A.この住戸が商品であるために、安心や信頼といった品質保証の問題をクリアしたうえで、提案を具体化しなければならなかったことに苦労しました。そしてコンペのときの提案で、残念ながら実現に至らなかったものもありますが、関係者の方々は厳しい条件の中で、私たちの提案を汲みとる努力をしてくださいました。この場をお借りしてお礼申し上げます。
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