《共催》
三井不動産レジデンシャル 新建築社

《協賛》
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応募要項 応募要項
2013年6月27日
2次審査結果発表をアップしました。
2013年5月28日
公開2次審査観覧希望者募集を締め切りました。
2013年4月24日
1次審査結果発表をアップしました。
公開2次審査観覧希望者募集を開始しました。
2013年4月5日
登録・作品受付を締切りました。
2013年3月28日
FAQを更新しました。
図面データを更新しました。
2013年3月26日
FAQを更新しました。
図面データを更新しました。
2013年3月21日
公開2次審査の開催日を変更しました。
2013年3月19日
FAQを更新しました。
2013年3月7日
FAQを更新しました。
2012年12月17日
図面データ(MCD)をアップしました。
登録・作品提出締切を訂正しました。
2012年12月10日
図面データを更新しました。
2012年12月1日
ホームページ をオープンしました。
応募登録の受け付けを開始しました。
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第8回三井住空間デザイン賞
実施住戸

パークホームズLaLa新三郷
設計:小野裕美


小野裕美(おの・ひろみ)

1985年神奈川県生まれ/2008年法政大学工学部建築学科卒業/2010年法政大学大学院建設工学専攻修士課程修了/2010~14年設計事務所勤務
左)玄関からバルコニーまで,ラッパ型に部屋の中心を貫く「通りみち」より見る.「通りみち」の左側に寝室などの居室,右側に水回りをまとめる.
右上)洋室2より見る.個室間および通り道間との扉の開閉によって空間を自由に仕切ることができる.
右下)「通りみち」の床タイルおよび,設えられたダイニングテーブルは光沢のある素材で仕上げられ,外部の緑を写し込む.

 


コンペ対象ユニット(208号室)平面 断面
住戸専有面積:83.93m2 バルコニー面積:32.99m2


 

左)審査委員が実施住戸を訪問.左から光井純氏, 井上徹氏,渡辺真理氏.右に小野裕美氏./右上)キッチンカウンター越しに語る古谷誠章氏./右下)ダイニングより玄関方向を見る.

 

第8回 三井住空間デザインコンペ概要

「住空間デザインコンペ」は,時代のニーズにあった「デベロッパーと建築家・デザイナーとの新しい関係」を探るひとつの機会として2002年から実施.2006年に開催された第4回からは名称を「三井住空間デザインコンペ」とし,若手建築家の登竜門と位置付け,最優秀賞を「三井住空間デザイン賞」として表彰,選ばれた最優秀案はそれに基づき実際に建設の上分譲されている.第8回の課題建物は,東京郊外(埼玉県三郷市)の新三郷駅前に開発された商業地区の一角に位置するファミリーマンション「パークホームズLaLa新三郷」(19階建て,総戸数250戸).提案にあたっては,現代において,子どもを育てる若い共働き夫婦が充実して暮らせる住まいが求められた.応募登録1,185件,応募作品588点の中から,古谷誠章,光井純,渡辺真理,井上徹の4氏による1次審査で8組を選出.2013年6月9日の公開2次審査の結果,小野裕美氏が三井住空間デザイン賞を受賞し,その提案が実際に完成した.2014年度グッドデザイン賞受賞.

「通りみち」から広がる家族と暮らしのかたち

「現代の共働き夫婦の子育て住宅」というテーマに対し,想定した家族像や子どもの年齢を聞かれることが多いが,特段考えていない.現代では「共働き」とは男女の社会的役割の変化はもちろん,テクノロジーの発達により,働く場所や仕事のあり方さえも多様化している.「子育て」とは親が子どもを見守ることから,子どもが大人へと成長していくまでの,親子の長い時間と関係性の変化を含む.こうした状況において,従来の細分化され固定化されたnLDKに家族を当てはめるのではなく,住まい手自身が想像力を掻立てられる,多様性と柔軟性を内包した住まいが必要だと考えた. 本計画では,空間を「水回り」と「寝室」という最低限の機能に分け,中心に「通りみち」という余白を設けた.「通りみち」は玄関からバルコニーまでひと続きに広がり,19.6畳の面積をリビングや執務スペース,遊び場として使うことができる.寝室と「通りみち」の間には室内開口を設け,角住戸の利点である2面からの採光通風が全体に行き渡るようにした.来客時や就寝時には引戸を閉めることで,視線や光漏れを遮り,寝室として必要な機能性と安心感を保つ.完成した住戸は,2階という目線の高さと新三郷の雄大な景色も相俟って,内外の一体感のある気持ちのよい空間を実現することができた.「朝起きて開口を開けると家中に光が溢れる」.こうした日々の生活の所作が,開かれた風通しのよい家族関係に繋がることを期待する.

(小野裕美)

実施住戸を訪問して

古谷 誠章
(建築家/早稲田大学教授)

この作品の応募案のタイトルは「広がる通りみち」.その名の通り,普通のマンションなら玄関ドアを開けて廊下を通ってリビングに行くのが,ほとんど当たり前にようになっているところを,「広げただけ」の,実に明快な提案だった.
でもその効果は抜群.完成した住戸に入って最初に感じたのは,それがあっけなく実現していること.末広がりにリビングに続く空間が,いたってさりげない.リビングの先には思い切りのよい大きなテラス窓で,開放感は玄関口に入った瞬間に人を包み込む.壁を斜めにしただけでねぇと感心することしきり.しかも,そのお陰でできるひと繋がりの寝室空間は,子どもを育てる夫婦にはもってこいの柔軟性を持っている.前々回の滝野川,前回の高輪は,ともに作品性の強い提案で,いずれも実現した空間には,その個性がそれ相応の主張をしながら現れていたので,それはそれで納得が行ったのだが,今回のこの空間の自然さは何だろう? あたかも,それが普通じゃないのという感じのさりげなさなのだ.でも,これって分譲マンションでは,とても重要なポイントなのではないかと,改めて気付かされた次第である.この案であれば,通常の住戸でも,オプションプランとして十分顧客に提示できるだろう.入って見れば一目瞭然である.

 

光井純
(建築家/ペリ クラーク ペリ アーキテクツ ジャパン,光井純&アソシエーツ建築設計事務所代表)

第8回目を迎える三井住空間デザインコンペの実施住戸を訪問してみて,コンペ審査時に描いていた空間のイメージと,実物がよい意味で異なっていたことは大変な驚きであった.平面図で提案されていた中央の「通りみち」は,図面上では少し狭いのではないか,と思っていたが,人の視覚とは面白いものである.逆パースペクティブが効いていて外部の豊かな緑量にうまく繋がっている.当然デザイナーはここまで考えていたとは思うが,不意を突かれてしまった.微妙に雁行する「通りみち」空間に対して,両側の寝室,キッチン,水回りは計算された開口部の配置によって,住空間全体が緩やかかつ,緊密に繋がっている.緩やかというのはさまざまの暮らし方を許容しているという意味であり,緊密とは確かな家族関係を意識し得ているという意味である.
具体的に述べると,まず廊下がまったく取り払われている.かつてのPP分離やnLDKの考え方が存在していない.マンションは家族が一緒に成長する場所であるのだから,これがよいのだと思う.家族間の距離は近い方がよい.一方で適度のプライバシーも十分確保されている.キッチンから浴室への繋がりも使いよさそうで,子どもを追いかける両親の姿が目に浮かぶようである.そして3つの寝室の緩やかな繋がりが絶妙である.普段は繋がっていて,必要に応じて分けて使うこともできる.開口部は可動式のパネルで繋がりの度合いを調整できるが,大きな家の中に小さな家があるようで,家族を育てるには面白い家に仕上がっていると思う.
マンションのインテリアは,実は大変難しい.大きな柱,PS,吸排気ダクト,空調機,限られた面積,余りにも厳しい制限のため,デザイナーはたじろいでしまいかねない.しかし今回の実施住戸は,まだまだ新しいインスピレーションがたくさん眠っていることを教えてくれている.これからも新しい発見に出会えることが楽しみである.

 

渡辺真理
(建築家/法政大学教授)

この集合住宅は,1970年代に供給が開始されたURみさと団地と新三郷駅の間に完成する商業地区の一角に居住機能を入れ,商業と居住の混成地域が生じるよう計画されたものである.担当者から,団地居住者の住替えや団地2世の入居というケースが少なからずあると聞き,新しい郊外のあり方に繋がるのではないかと心強く思った.かつての団地は建て替えなどで延命を図っているが,商業や居住機能を誘致して地域全体の底上げを狙うのはそれよりよほど積極的なアプローチだからである.1980年代に,ロサンゼルス北部・サンフェルナンド・ヴァレーという新郊外のファッションやライフスタイルを体現する若い女性たちが,「ヴァレー・ガール」として一世を風靡したが,ここが「ミサト・ガール」や「ミサト・マダム」の生活拠点となるのではないかという未来志向の発想ができるのも嬉しい.
住戸内に足を踏み入れるとバルコニーとその外部の庭園に向かっての開放感が素晴らしい.この住戸では室中央に「通りみち」(作者曰く,住まいの中を貫通する都市空間の延長のような場所)を設け,その両側にプライベート空間が配されている.この住戸が団地2世の居所,あるいは団地からの住替え拠点となったら,一家族で孤立しがちな住まいではなく,家族や知人の来訪が絶えないにぎわいの場となるポテンシャルを持っている.外部に閉じがちなマンション住戸には救世主となる発想の効果がまずこの土地で確認できることはとても意味深い.「通りみち」は床を光沢のある白い大判タイルで仕上げて公共性をさりげなく強調している.それ以外の室内仕様は一般住戸とほとんど共通だそうだ.が,なかなかそうとは見えない.垂れ壁のない開口部,吊り建具の処理,引手デザインなどディテールを消去するデザインが利いているせいだろう.

 

井上徹
(三井不動産レジデンシャル取締役専務執行役員 開発事業本部長)

第8回となる今回は,自然豊かな郊外にありながら,ららぽーと新三郷などの大型商業施設が充実する新しい街,埼玉県三郷市の「パークホームズLaLa新三郷」を課題建物とした.三井不動産レジデンシャルとして求めたのは忙しい共働き夫婦が限られた時間を有効利用しながら豊かに暮らせる住まいである.
特徴的な「通りみち」は主開口面に向かって斜めに伸びる斬新な壁面と,余計な凹凸を極力排除しすっきりと仕上げた床・壁・天井により,外部の植栽や採光を自然に室内へと取り込む開放的な大空間となっている.見学中に「ここでパターのパットをしたら」「子どもたちにボーリング大会をさせたら」という会話が自然と生まれたことは,当初イメージしていた「居住者が自由な発想で使いこなせる大空間としての通りみち」という意図を具現化できた結果である.
水回りは「通りみち」に沿って開いたキッチンとプライバシー性を保った洗面・浴室が一体的に繋がることで,家事や子育てを効率的にサポートできる.居室も「通りみち」に向けた窓を設けることで,角住戸の特権である通風・採光のメリットを住戸内にも引き込み,来客時は窓を閉じることでプライバシーを確保できるフレキシブルな空間を実現した.
本プランは廊下という導線空間をうまく「通りみち」に取り込み,生活空間が最大限確保できていて,そこでの豊かな暮らしを想像することができる.「暮らし」を大切に考える今後の集合住宅においても新しい示唆に富んだ住戸となっている.


本実施住戸応募案(結果発表は『新建築』2013年7月号).