共催:株式会社日建設計 一般社団法人渋谷未来デザイン
  後援:株式会社新建築社
  協賛:株式会社アカツキ
  

最新情報

2019年2月12日
「1次審査結果発表」ページ、「コンペ公開2次審査会観覧者募集」ページをアップしました。
2018年12月11日
応募登録の受け付けを締め切りました。
2018年9月1日
ホームページをオープンしました。
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過去のコンペ

テーマ座談会

今回で3回目を迎える都市のパブリックスペースデザインコンペは,今年発足した「渋谷未来デザイン」(以下:FDS)と前2回の主催者であり,FDSの協業パートナーでもある日建設計の共催,同じくFDSに協業パートナーとして参画しているアカツキの協賛によって開催されます.今回のテーマは「『Shibuya』的なパブリックスペース」.これまでの2回から引き続き審査を務める岸井隆幸氏(審査委員長),西沢立衛氏(審査委員)のふたりに,渋谷を拠点に活動している林千晶氏と佐藤夏生氏の2名を新たに審査委員に迎え,それぞれの考える「Shibuya」についてお話しいただきました. [編]

 

岸井|このコンペを始めたきっかけとして,これから建築を自分の生業にしていく若い人たちに,もっと都市を語ってもらいたいという思いがありました.昨年までの2回の課題では特定のエリアをテーマにしてこなかったのですが,今回は初めて東京の渋谷という特定の街をテーマに据えています.応募者にとっては渋谷をどのように捉えるかが,最初に考えるトピックとなるでしょう.
ロケーションとして渋谷を捉え,そこに必要なパブリックスペースを提案しようという人もいれば,渋谷をコンセプチュアルなものとして捉えて,それぞれが「Shibuya」という言葉からイメージするものを別の場所で,パブリックスペースに投影するという方法も考えられますね.前者のロケーションとしての渋谷を語ろうという人には,単なる空間を提案するだけではなくて,そこで何をやろうとしているのか,そのためにどういう仕組みを設計して,どのような人たちのアクティビティを実現していくのかといったところまで考えてもらいたいと思っています.個人的には後者のコンセプチュアルに渋谷を捉えようとする方が,何を「Shibuya」的だと考えているのかに非常に関心があります.


西沢|「都市のパブリックスペース」という広いテーマを掲げた第1回目は地方色が溢れていた点が印象的でした.最優秀賞を受賞したのは長野市を対象とした案で,城下町のグリッドを斜めに流れる水路によって生まれる三角形のへた地に着目する案でした.東京を対象とした案でも,いろいろな地域やその歴史へ繋がった提案がなされていておもしろかったです.「都市のスキマ」をテーマとした第2回目は1回目に比べて敷地が中国や日本の大都市に限定されていたような印象があり,がぜん都会的,ビジネス的になりました.ニュービジネスを提案するような案が多く,まさに岸井さんが先ほどおっしゃった仕組みの部分の提案が多かったように思います.そういう意味では,1回目と2回目では応募者の反応が異なりどちらも興味深かったです.
歴史がある深川,浅草などの東東京に比べて,渋谷を含む西東京はより近代的で,戦後日本の爆発的な発展を象徴する場所だと思います.東京は戦後の高度成長で,爆発的に巨大化して,周りの地方都市を郊外としてどんどん取り込んでいった歴史があります.遠距離通勤で都心に集まってくる通勤電車が整備されて,放射状に広がる電車網が巨大化した東京をネットワークしていたのですが,その電車の終点が池袋,新宿,渋谷でした.この3つの街は,東京圏全体にとってまさに頂点,中心地というイメージがあった.郊外からやってくる電車の終着点ですから,郊外の子どもにとって渋谷は大都会で,怖いところというか,デートに行くにしても映画を見に行くにしてもある種の決意が必要な場所でした.また,池袋,新宿に比べて渋谷はとくに,ファッショナブルというか,とんがっていて,昭和の子どもにとっては勇気のいるところだったと思います.当然,海外の人は違うイメージを持っているでしょうが,東京郊外の子どもにとっては渋谷はそんなところでした.
渋谷の魅力というと,ひとつは地形だと思います.渋谷という名前は谷という意味がありますが,豊かな地形があって,地形をよく感じられる界隈や裏通りがあって,そこで暮らしている人びとの姿があって,それらは渋谷らしい魅力のひとつになっていると思います.渋谷は,パリやローマのように観光名所の建築があるわけではないものの,いろいろな魅力的な界隈があるのも好きなところです.


|私は今回の課題では「人の動き」に着目してもらいたいと思っています.西沢さんがおっしゃるように,渋谷の景色を考えた時に,その象徴となるのはエッフェル塔のようなモノよりも,人の動きだというのは,スクランブル交差点で信号が青になった瞬間にカメラを構える人の多さからも窺えます.
私も西沢さんと同様に,渋谷には今でも怖さがあると思っています.それはたとえば表通りから裏通りに入った瞬間,雰囲気がガラッと変わり,急に違うエリアに来てしまったと感じる時に生まれる緊張感のようなものです.私はそのような渋谷における表と裏の関係は,人間の体が交感神経と副交感神経を切り替えながらバランスを取り続けることと似ていると思います.そのスイッチをデザインすることは難しいのですが,挑戦する意味があるのではないでしょうか.


左:2016年度最優秀賞「浮かび上がる小さな街かど」(大村公亮+出田麻子+上田彬央/信州大学大学院)
右:2017年度最優秀賞「URBAN PLUGIN」 (Siqi Li/東京大学大学院+Xiaoting Chen/MVRDV)

 

カオスと調和が併存する街

佐藤|私にとって渋谷は「予想外」というか,驚きの要素が強い街です.だからこそ,これだけ若い人が集まっているのでしょう.私は中学生の頃から現在まで渋谷で過ごしてきましたが,渋谷のおもしろいところは,経済や流行の影響がとても強い街でありながら,小さなものが存在できることだと思います.たとえばどこかの商店街だと潰れてしまうような,小さなパン屋や雑貨屋が生きていける環境が渋谷にはあります.もちろん強い個性があっての話ですが,「スモールストロング」というものが成立するのは非常に興味深いですね.
日本のアイデアコンペでは調和をもたらすものが評価されることが多いように感じます.しかし渋谷のよさは調和だけでは伸びていかないと思います.パブリックスペースのデザインだからといって,調和や平和を生むのではなく,そこから劇的に次のカオスが生まれるくらい個性の強いものを期待したいです.他の場所にも展開可能な再現性が高い仕組みよりは,究極に再現性が低いものがパブリックとして存在するのが渋谷らしいと思います.


西沢|ヨーロッパでは東京は巨大すぎる村だとよく言われるのですが,東京の変なところ,というかおもしろいところのひとつは,東京には全体を統合するマスタープランというものがないのです.全部がつぎはぎで,戦後のカオス的混乱のままここまで巨大化してしまったのに,しかしそのわりにはどこも非常によく機能しているところです.マスタープランがないという意味でカオスではあるんですが,郵便は毎日正確に届き,ゴミ収集もものすごく正確で,電車も遅れることはなく,犯罪は少なく,街としてすごくよく機能している不思議というのがあると思います.渋谷は,そういう東京らしさを代表する場所でもあります.


|カオスと調和が同時に存在する,つまり矛盾しているところが渋谷らしさなのかもしれませんね.スクランブル交差点にしても,最低限のルールがあるからこそ歩けるんです.ただし,それは海外の人が体験したことのないルールで,たとえば日本の満員電車の詰め方でも同じことが言えるのではないでしょうか.


渋谷駅前のスクランブル交差点.

 

無関心さが保つ渋谷のダイバーシティ

佐藤|渋谷区の基本構想に「ちがいを ちからに 変える街.」という言葉があって,街をあげてダイバーシティを推進しています.
渋谷は求心力があるのに,ひとりひとりはとても無関心.それがダイバーシティを担保しているように思います.たとえば金沢や京都だと,街を愛している人が多く,人の繋がりが重要視されていると思います.しかし,コミュニティという共存意識が強すぎると,楽しいだけでなく排他性が生まれてしまうことがあります.
現在,ダイバーシティと言うと相手に,より関与することが求められています.ネット上で起きる炎上は,関与が関与を産むことで起こってしまうもの.実は繋がっていないこと,関与しないことも必要という見方もできます.あえて無関心や無関与でいるというのは時代の新しいテーマになり得るのではないでしょうか.


|佐藤さんがおっしゃる無関心というのは,ひとつの場に身体を伴って,同じ時代のこの場所にいるという前提での「無関与」ですよね.つまり渋谷は,その街を歩くことによって,世の中には多様な人間がいるということを受動的に学習できる場なんだと思います.


佐藤|個の時代になるにつれて,われわれは生活の中で発生する気持ち悪い感覚や,緊張感を排除する方向へ進んでいると思います.私はそれがダイバーシティを阻害しているんじゃないかと懸念しています.ダイバーシティを考えた時,ある程度の気持ち悪さとある程度の緊張感を全員が持っていることが大事だと思うんです.それは人間社会を形成する上で当然のことなのですが,近年はその緊張感があまりにもなくなってきています.ところが,渋谷を歩くと気持ち悪さと緊張感がある.その不快性こそが「Shibuya」なのではないかと思います.ドキドキもするし,怖くもある.でもそれが人と付き合う,他人と関わるということなんだと思います.


西沢|私は,無関心・無関与というのは渋谷的でもあり,日本の街全般にもある程度言えることではないかと思います.日本の街は無関心と従順さでできていて,大きな開発や大改造が起きてもみな無関心で,デモがなくて,スムーズに受け入れられてしまう.目の前にとんでもない建物が建っても,みんな「すごいもんができたねえ」と感心する.無関心さというのが日本の都市の風景にそのまま反映されているところがあると思います.


渋谷のイメージ.1:竹下通り.2:笹塚十号坂商店街.3:代々木公園.4:代々木公園に隣接する「渋谷はるのおがわプレーパーク」.5:再開発が進む渋谷駅前.6:明治神宮の鳥居.7:玉川上水旧水路緑道.8:NHK放送センターから代々木公園へと続く緑道.

 

渋谷の形成過程に目を向ける

岸井|ところでみなさん,渋谷と新宿はどのように違うのでしょうか? 新宿でも同じようなことが起きていそうですよね.


佐藤|新宿は渋谷と繋がる部分は多いと思いますが,渋谷は文化の発信地が多かったと思います.ストリートがステージとなり,ファッションなどの新しいものが溢れている,新宿と渋谷,どちらもカオスでありながら,スタイルが違います.私は団塊ジュニア世代ですが,1980年代,若者の数が多かった時にタイミングよく渋谷に海外の文化が入ってきて,渋谷はそれ以降若者の街になったんだと思います.


岸井|私は,1964年の東京オリンピックも渋谷の個性的な発展に寄与していると思うんです.渋谷は国立競技場と駒沢総合運動場を結ぶためにつくられた国道246号線に接続していますし,そういう意味では当時の新宿や池袋に比べてフィーチャーされる場所だったと思います.そしてNHKがやってきた.このことが渋谷にとって大変な意味があった. NHKのシャワー効果は大きかったんじゃないでしょうか.また,渋谷は戦災復興によってハチ公前という広場を手に入れた.ああいう空間はなかなかないですよね.その存在がその後の街の発展にも大きく効いている気がします.いろいろな人が勝手に集まれる空間で,特定の目的を有していない.渋谷ではいろいろな人が勝手にいろいろなことをしていく中で街がかたちづくられていくのですが,それをすべて受け入れてしまう.渋谷らしい面白さを感じます.


西沢|渋谷は歩いていて,おもしろいなと思います.いろんな道と坂,いろんな界隈と街角があって,都市空間がモザイク的に繋がっていく魅力を感じます.スクランブル交差点もおもしろいし,商業空間群もおもしろいけど,しかし裏通りもおもしろいのです.
渋谷は,「無関心」という言い方もできるんだろうけれど,それは「寛容さ」でもあるように思います.おかしな人が歩いていてもよいという自由さと寛容さがあって,それは渋谷という街がつねに変わっていく価値の変化があるということが強みだし,また,老若男女がいるという,いろんな階級の人が同居していることの豊かさではないかと思います.渋谷的なパブリックスペースを考える際には,現代社会ならではの多文化的な,寛容で自由なパブリックスペースを考えてもらうことも,重要かもしれません.


[2018年7月25日、Loftwork Shibuyaにて 文責:『新建築』編集部]

 
 

日建設計

日建設計では近年,魅力的な都市体験を提供することを念頭に置きながらパブリックスペースのデザインを行っています.シンガポールで現在進行中の「レイルコリドー」では,24kmにわたって国を南北に分断していたマレー鉄道の跡地を,国を繋ぎ直すパブリックスペースとして再生しています.また,「クールツリー」と呼ばれる自然エネルギーだけを利用して快適な環境をつくり出す木製のストリートファニチャーの提案も行っています.
「都市のパブリックスペースデザインコンペ」の3回目を迎える今回は,渋谷というグローバルに人気のある街の名前をテーマに冠しています.今年は渋谷に本コンペの共催者でもある「渋谷未来デザイン(FDS)」が発足しました.日建設計も参画し,実験的な試みを渋谷区が中心となって共に行っています.応募者のみなさまには渋谷という街の持つイメージから,たくさんの魅力的な都市体験を提案してもらうことを期待しています.

[大松敦/日建設計]

左:レイルコリドーのイメージパース.既存の駅舎や豊かな緑を残しながら,まちとまちを繋ぐ多様なパブリックスペースがつくられる.
右:クールツリー.ベンチの周りにはミストの吹き出し口や,ファンが内臓され,屋根上部の太陽光パネルによって電源をまかなっている.

 

渋谷未来デザイン

渋谷未来デザイン(FDS)は今年の4月に立ち上がったばかりの一般社団法人です.渋谷区が2016年から掲げている「ちがいを ちからに 変える街.」という基本構想の実現に向けて,渋谷区が発起人となって立ち上げた組織です.まちづくりとひと言で言ってもいろいろな課題があります.それらの課題に対して行政だけでやれることは限られており,また民間だけではできないこともあります.あるいは大学がやっている研究を社会に埋め込んでいくことや,街の人たちの声をまちづくりに取り込んでいくにはそれぞれが協働できる仕組みづくりが必要でした.
FDSでは,「地域社会の未来(フューチャー)」,「地域社会の誇り(シティプライド)」,「地域社会の発信力(ブランド)」を念頭に,今回のコンペの内容がまさに含まれる「パブリックスペース利活用プロジェクト」などさまざまな事業を展開しています.実施にあたっては区民,NPO,企業,大学,行政のみなさまに加え,今回審査委員を務める林千晶さんや佐藤夏生さんら各界の最先端の方がたにFDSの「フューチャーデザイナー」としてアドバイスをいただきながら押し進めていきます.
今回のコンペでは,渋谷駅周辺以外にも目を向けるのもよいかもしれませんね.例えば,地形を読んで工夫された玉川上水の新旧水路がある笹塚・幡ヶ谷・初台エリア,ファッションの分野でもそれぞれ独自の文化が育つ原宿,代官山,恵比寿エリア,代々木公園や明治神宮のまとまった緑など,渋谷には魅力あるたくさんのエリアが広がっています.応募者の方には是非さまざまな視点から渋谷を見てほしいと思います.

[須藤憲郎/渋谷未来デザイン事務局長]

渋谷未来デザインの組織図

 

アカツキ

アカツキでは「A Heart Driven World」 (感情を報酬に発展する社会をつくる)というビジョンを掲げ,感情を重視して事業を進めてきました.2010年の創業以来,モバイルゲーム事業を中心に展開してきましたが,2016年の上場を契機にライブエクスペリエンス事業,つまりリアルな体験に軸足を置いています.中でもアウトドアレジャーの予約サービスや,サバイバルゲームやパーティクリエーションなどリアルなエンターテインメントのコンテンツのプロデュースも行っています.
今回のコンペでは,渋谷にとどまらない,海外にも展開していけるようなグローバルなアイデアがたくさんでてくることを楽しみにしています.今回のコンペを通して出てきたアイデアを本当に実現する時に,われわれも協力できると素晴らしいなと思い,期待しています.

[佐藤永武/アカツキ]


アカツキが手がけるパーティクリエーションサービス「hacocoro」の会場イメージ.貸切専用にリノベーションされたスペース.