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結果発表をアップしました.
2014年3月17日
プロポーザル部門1次審査結果発表をアップしました.
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2014年2月27日
応募登録受け付けを締め切りました.
2013年10月1日
応募登録受け付けを開始しました.
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プロポーザル部門 審査経過

――2次プレゼンテーションを聞かれての皆さんのお考えを聞かせてください.
妹島
それぞれの分煙に対してのアイデアが掘り下げられていて面白いと思いました.中でも私は三木+黒田案の空間に曲面壁を立てる案は実現性がある思いました.提案されたすべての壁を立てるのは難しいかもしれませんが,壁が煙を吸う装置になって,たばこを吸う人と吸わない人が一緒に居られる空間がつくれるように思います.阿部+高松案もそれに似た提案をしています.昔の建物の記憶を継承することからの柱ではなくて,集まる場所としての柱のあり方をもう少し考えた方がよかったかと思います.あと北潟+清野+伊藤案は,土をもう少し上手に使えば何とかできるように思うのですが,どうでしょうか…….
西沢
僕も三木+黒田案に好感を持ちました.仮に部分的に具現化されたとしても,このアイデアは有効だと思います.入隅のところなどの2,3カ所でたばこを吸えて,あとは通り抜けられる場所にすることもあり得ると思います.もうひとつは,阿部+高松案もよかったです.ただしお店のファサードに喫煙者が群がってしまうので,柱の用途を少し検討する必要があります.
六鹿
私も三木+黒田案を推薦します.壁と手元が近いところで煙を吸ってくれると,たばこを吸わない人が横にいてもあまり気にならなそうです.課題があるとすると,それほど大きな空間ではないので,壁を入れ込むと見通しや開放感を確保できるのかということと,風除室本来の機能を果たすものをつくっておかないと,扉の開閉の度に煙が流れ出てしまいます.阿部+高松案も,柱を壁面と同じようにとらえれば,可能性はあると思います.北潟+清野+伊藤案は議論の余地がありますね.シミュレーションをやったり実験道具を持ってきたり,自分たちで試して,その結果を信じてデザインしていく姿勢はとても共感できました.
佐藤
森川案が天井に穴が空いていて空気の流れに無理がなく,面白いと思います.石井+和田案は,断面にアイデアが上手く表現されていて,物の表面に沿って煙が上がっていく効果を狙い,下からだけ空気を吹き出すアイデアは秀逸です.ただ,コスト的なことを考えると難しいですね.煙を強制的に排気していくことと,自然に排気するのとふたつの異なった気流制御を使う難しさがあります.北潟+清野+伊藤案は,エンジニアとしては是非実現してみたい案です.煙をポジティブに捉えていることが他の案とは違います.実現からいちばん離れていますが,魅力的です.
佐伯
私は森川案がきちんと煙を分けることができるのなら外への視線の抜けが気持ちよくてよいと思います.三木+黒田案も煙を吸う板が人の居場所をつくって,たばこを吸う人と吸わない人が共存できそうです.山本案の煙が渦を巻いて吸われていく案にも魅力を感じました.煙が渦を巻いて吸われるのは技術的に難しいですが,煙が可視化されるとしたら面白いアイデアです(笑).
井上
森川案は実現可能ではありますし,本当に天井に沿って煙が上がっていくのであれば面白い案です.ただ,スケールがよくないと思いました.煙が沿っていく天井が1,500mmしかないと,人がぶつかりますし,快適ではないでしょう.私は,阿部+高松案,三木+黒田案がよいと思いました.両方とも実現可能です.阿部+高松案が提案する歴史的背景はなかなか一般には受け入れられづらいので,柱の機能だけ切り離して提案した方がよいかもしれません.たばこを吸う人と吸わない人がお互いに向き合って座ることができる環境をつくることができたら面白いと思います.三木+黒田案についてはシンプルでよいと思うのですが,壁や床の素材感が重要ですね.北潟+清野+伊藤案はここでの実現は難しそうですが,外でたばこを吸うところを植栽と一体としてつくれたら面白そうです.
古谷
今回も実際につくることがひとつのテーマなので,実現可能であることが大切です.前回のSMOKERS' STYLE COMPETITION 2010 の具現化した「Cafe´ SETSUGEKKA」は,成功例として挙げられていますが,アイデアの段階では現実性はあまりないものでした.ただ,そこから技術者と協働しながら建てた経緯があって,そういう意味ではこの段階で完成度が高くなくてもよいのです.ただ何か,完成に向かえそうな方向性がほしいと思います.結論からすると皆さんと同じになってしまうのですが,三木+黒田案,森川案がよいと思いました.そのふたつは改善は必要でしょうが,実現の可能性があると思います.また,改善の道のりが遠いのだけれども,面白そうなのが石井+和田案です.天井から吊り下げられている板が,煙を沿わせて吸い込むための装置であるのならば,ゆらゆら揺れる軽いものでもよいのではないでしょうか.それにまとわりつくように煙りが上がり,その先に排気口がある.下から空調の空気を送り,排気口から空気が抜けるという計画だと面白いです.阿部+高松案は,提案されていた穿つボリュームはいろいろなパターンが可能なのではないのかなと思います.これで皆さんの意見が出そろいました.三木+黒田案が6票,阿部+高松案が4票,森川案が3票,北潟+清野+伊藤案3票,石井+和田案1票です.最優秀案を決めていきたいと思いますが,三木+黒田案に佐藤さん以外の皆さんが投票されています.佐藤さん,ご意見いかがでしょうか?
佐藤
三木+黒田案はミクロ的にそれぞれの板から煙を吸っています.システムとしてマクロとミクロで対応し,もう少し大らかなシステムが織り込まれていたらよかったと思います.実現は可能だと思いますが.私は石井+和田案が空気の流れとしては自然でよいと思います.
西沢
この案は,上のフィンに煙を集めてもらうためには,一種のポーラスな吸い込みダクトみたいなものとして設計することになりますよね.わりと難易度が高い気がするのですが…….
妹島
この狭い空間には,この天井からの板と床からの板がちょっと大きすぎる気がしませんか.
古谷
そうですね.捉え方次第なのだと思います.たとえば僕は濱田案も考え方を少し変えるとだいぶ面白くなると思います.という風に,それぞれ面白さはあると思うのですが,実現という部分に対して,最も柔軟に対応できそうなアイデアとして,皆さんのお話をうかがっていると三木+黒田案が最優秀賞に相応しいように思います.いかがでしょうか?
(審査委員一同同意)
では,三木+黒田案を最優秀賞に決定したいと思います.次は優秀賞ですが,こちらは実現はできないので,少し方向性を変えて,アイデアとしての面白さや,実現するために設計者が取っているアプローチを評価できたらと思ったのですが,どうでしょうか.
西沢
そうですね,そのように考えると,阿部+高松案は目のつけどころはよいのですが,アイデアとしてもう少し魅力的な場の提案ができたように思います.
佐伯
私は山本案が非常に面白いと思いましたが,トルネード状に気流をつくる技術はすでに開発されており,それほど新しいわけではありません.
佐藤
そうですね.そういう意味では,北潟+清野+伊藤案にはオリジナリティがあります.
古谷
僕もそう思います.実現からは遥かに遠いと思いますが,アイデアをどう実現できるかという部分に設計者の熱意も感じました.審査委員の皆さんも難しいと思いながらも魅力的に感じていますよね.北潟+清野+伊藤案のアイデアを優秀賞として評価すべきではないかと思います.
妹島
アイデアとしてはとても面白い.もしできたら新しい可能性が生み出せそう……と思わせてくれる案ですよね.よいと思います.
井上
土を使うことは難しいと思いますが,できたとしたら見たことのない空間になりそうですし,それをつくり出そうとする設計者の想いは感じました.
(審査委員一同同意)
古谷
それでは,決定しましょう.本日プレゼンテーションをしてくださった皆さん,ありがとうございました.

(2014年4月13日,JTアートホールアフィニスにて 文責:『新建築』編集部)