主催:UR都市機構  後援:株式会社新建築社

最新情報

2012年7月3日
2次審査結果発表審査講評をアップしました。
2012年5月18日
2次審査結果発表(速報)をアップしました。
2012年3月21日
1次審査結果発表をアップしました。
2012年2月28日
応募登録の受け付けを終了しました。
2012年2月20日
FAQを更新しました。
2012年2月15日
FAQを更新しました。
2012年2月14日
FAQの質問受付を終了しました。
2012年2月10日
FAQを更新しました。
図面「9. 広場平面図_植栽(PDFのみ)」を追加しました。
2012年2月9日
FAQを更新しました。
図面「3. 断面図、矩計図_修正」の図面を修正しました。
図面「8. 広場平面図_追加(DXFのみ)」を追加しました。
2012年2月2日
「5. 躯体図」の図面を修正しました。
FAQを更新しました。
2012年1月30日
FAQを更新しました。
2012年1月25日
FAQを更新しました。
2012年1月20日
FAQを更新しました。
2012年1月18日
FAQを更新しました。
2012年1月12日
審査員コメントを更新しました。
2011年12月26日
FAQをアップしました。
2011年12月21日
審査員コメントをアップしました。
2011年12月1日
ホームページをオープンしました。
応募登録の受け付けを開始しました。
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審査講評

 

西沢 立衛

建築家/横浜国立大学大学院Y-GSA教授


花畑団地はたいへん魅力のあるところだ。諸建築群は高度成長時代につくられたもので、簡素で質実なものだが、同時にたいへんストレートで力強い。貧しさがそのまま豊かさに転じるようなモダニズムの瑞々しさ、戦後の日本の時代の勢いが、強く感じられた。配置計画も素晴らしく、竣工からずいぶん時間を経て緑が美しく育ち、建物とランドスケープが一体となって、豊かな居住環境となっていた。今回の審査では、そういった歴史的財産を前提にしつつ、次の時代を描く未来的な提案を期待した。藤田案は、内外を同時に変えるような、環境的な広がりのある案だ。その透明感と、ルームテラスの配置の巧みさに好感を持った。木製建具だけの提案ではなく、それを超えてランドスケープ全体に広がる美意識が提示された。本田案は、雨戸と土縁というふたつのことで、内と外がドラマチックに変化する点がすばらしい。その観点からすると、水回りの位置が各階同じ場所なのは、外観の多様さが犠牲になるのではと感じた。石橋+徳田案は土間という伝統的概念を使いながら、洗練された都会的なセンスと快適さを評価した。他方でCMセット的というか、インテリア的な提案で、そのセット性には内向きな印象を受けた。嶋田案は、全応募案の中でも異色の案で、建築単体的発想を超えたグローバルな視野の提案に魅力を感じた。しかし建築は従来的な発想で、建築家である作者自らが建築のデザインに期待していない点はさびしい。今回のコンペに見られる、歴史的環境の継承をしつつ未来に向かう提案をするということは、僕らの時代に課せられたたいへん重要な課題だ。このような問題提起が、今後もさまざまなところで続くことを願う。

 

安 昌寿

都市プランナー/日建設計副社長


今回のコンペは、スイートスポットが一見非常に狭く見える中、多くのバリエーションに富んだ丁寧な案が寄せられ、大変勉強になった。最優秀賞の藤田案は、木製建具や、ユニットごとに異なるバルコニーの配置などの操作が外観にも表情となって現れること、狭い空間における引き違いの間仕切りの機能性の高さなど、建具というひとつのポイントから数多くの提案がなされた点を高く評価した。46年前に庶民の期待を背負って登場した当時の颯爽とした存在感が再現される。嶋田案は団地活性化のプログラムの提案として1次審査から注目していた案である。今回、実現できるかはともかく、非常にチャレンジングかつ現実性もある提案だと思う。吉田+井上+梁田+奥山案は、いわゆる団地サイズの狭く小さな空間構成を踏襲しながら、現代のライフスタイルに合わせているという説明にぐっときた。家原+三宮+豊嶋+田原案は熟練度の高い提案だった。手をつけていいところとそうでないところを明確に分けた外構計画もすばらしい。清水案はコストを抑えつつ、どれだけ新しい価値を与えられるかという改修ならではの挑戦に真っ正面から取り組んでおり、その点を評価した。今回のUR都市機構の意欲的な取り組みに心から敬意を表する。最優秀案は実施にあたりクリアするべき課題も多いが、それは同時にわれわれ審査委員にも課題が与えられたということだと認識している。今後、全国に存在する70数万戸のストックの改修にあたっても、今回寄せられた多くのアイデアを参考にしていただきたい。彼らと力を合わせて改修に取り組んでいただきたいと願う。

 

田村 誠邦

建築コンサルタント/アークブレイン主宰


非常に制約条件の多い中、これだけ多くのバリエーションを示せただけでも、非常に価値のあるコンペだったと思う。また、最終候補10組は若い設計者が多く、彼らのチャレンジングなアイデアを見られたことは審査の喜びであった。家原+三宮+豊嶋+田原案は内部にテラスを取り入れる案が複数ある中でも、梁貫通をしなくてすむ設備系の処理やバルコニーを追加した時の加重計算など、技術的な側面がかなり練られている点を高く評価した。マーケティング的にも十分あり得る提案だ。石橋+徳田案は洗練されたデザインで好印象を持ったが、インテリア的操作にとどまっているように感じた。既存のバルコニーと断熱庭との関係がうまく解かれているとよりよかったのではないだろうか。嶋田案は、1棟のリノベーションを社会全体の問題として捉え解決しようとする視点の広さがすばらしい。実現性に課題は残るが、こういうアプローチを示したことは高く評価したい。居波+扇芝+小村+三塚案はプランニングの明快さとバリエーションの多様さは評価するが、無難にまとまりすぎているのが惜しい。藤田案は魅力的な案だが、各階異なる場所に設けられたルームテラスは、防水面が心配だ。今後、団地改修におけるひとつのモデルを選ぶと考えると、住まい手にとっての快適性が技術的に裏付けられることは重要と考え、あえて推すことはしなかった。今後実現にあたっての挑戦に期待したい。青木+松原案は住戸を解体し、プライベートからパブリックへのグラデーションをつけている。突飛な案だが、標準世帯形態が多様化する現代に対する提案として高く評価したい。いずれにせよ、団地のような公的な住宅ストックを次の時代にどう生かしていくかは、今後も真摯に考えなければならないと再認識した。

 

望月 常弥

UR都市機構 東日本賃貸住宅本部長


今回の対象建築である花畑団地27号棟は、竣工当時、大量供給という面だけではなく、通風や採光など、さまざまな面において世の中に提案をしたボックス型住棟である。今回、この改修に多くの提案が寄せられ、これからのストック再生における多くのヒントが得られたと思う。内部での事前検討とは異なる視点も多く、非常に刺激的であった。事業者としての立場から、事業性・経済性を重視して審査を行った。まず吉田+井上+梁田+奥山案は、ふたつのバルコニールームを設けることによって、さまざまなライフスタイルに応じた住まい方を可能にしている点を高く評価し選定した。同様の案がいくつかある中で、実現性、経済性の観点から見ても優れた案である。居波+扇芝+小村+三塚案は、さまざまな生活シーンの提案がなされていることや間取りパターンの豊富さを評価した。実施という観点からもすぐにでも実現できそうな案である。高嶋+茶谷+大石+松浦+吉本案の、家具システムを使いさまざまな空間操作を行うという視点も捨てがたい。今後、既存ストックを改修する上でも有効な手段であると感じた。最優秀賞に選ばれた藤田案の木製建具は、かつての公団住宅の懐かしさも感じさせるようなユニークな提案。ただ、インナーテラスの防水や騒音問題、メンテナンスなどをどのように処理していくのか、実施にあたってはクリアすべき課題は多いと考えている。まずは最優秀賞の藤田案をすみやかに実現していきたい。