審査講評
審査委員長
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隈研吾今回のコンペが、単なる戸建て住宅の建築を目的としたものではないというのは重要なことです。現在、戸建て住宅に対して「自分のことしか考えていないもの」というイメージが生まれつつあるように思います。そして、従来のようなコンクリートのマンションについても、これからの住まいとしてふさわしいものであるかというと、疑問を持っている人も多いようです。そうではない新しい住まい方への希求を、東京のような都会ではなく、西条という水と景観に恵まれた場所で実現させようとしている。これまでの世界の住宅のコンペにはなかった、画期的なコンペであったと思います。 |
審査委員
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乾久美子戸建住宅と宅地を開発する場合、その宅地がバラバラな個人の集合となることを前提としますが、今回は、戸建て住宅を通して共同体をつくるという試みです。とても画期的なことだと思います。 |
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馬場正尊このコンペは、それぞれの応募者のポートフォリオの中でも、キーとなるプロジェクトとなったはずです。敷地に建物が並ぶ様子を想像すると、今までの日本の住宅地には見られなかった景色が展開されることは間違いない。塀がなく、住宅が敷地や環境を共有し、住民は、家というより街に住んでいる感覚になる風景が出現するのでしょう。 |
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馬郡文平質疑応答では、環境系の目線から、開口の処理や通風など、このままでの実現は技術的に困難と思われる部分について中心的に質問しました。群棟提案は面白い一方、考慮すべき点が多く、非常に難しい。どの案もよく解かれ、結果的に僅差の審査となり、9案に絞るのは大変難しかったという印象です。選ばれなかった作品にも、感心させられるものが多くありました。 |
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山名正英このコンペに応募してくださった325組すべての建築家の方々に、お礼を申し上げます。みなさまのご提案は、ぜひ私たちの街の財産として、大切に活用させていただきたいと考えております。熱い思いを受けて、私たちも「糸プロジェクト」の実現に向けて、一層身を引き締める思いです。 |
(2017年4月15日、愛媛県西条市にて、文責:本誌編集部)
左、中:質疑応答の様子。登壇する発表者と審査委員。実施コンペとして緻密なやり取りが行われた。 右:公開プレゼンテーションとし、将来の住民や地元の人びとをはじめ、多数の来場者が訪れた。設計者のイメージを可視化するため、1/100の模型提出を必須とし、会場に展示ブースが設けられた。審査会終了後、模型は糸プロジェクト実行委員会に提出され、今後、住民に向けた説明、販売などでも使用される。