主催:糸プロジェクト実行委員会  後援:株式会社新建築社  協力:東京大学隈研吾研究室

最新情報

2017年6月1日
「2次審査結果発表」、「審査講評」をアップしました。
2017年4月13日
「公開プレゼンテーション観覧者募集」を締め切りました。
2017年3月23日
「1次審査結果発表」をアップしました。
「公開プレゼンテーション観覧者募集」をアップしました。
2017年3月7日
応募登録の受け付けを終了しました。
2017年2月6日
【登録番号の記載について】の追加修正をアップしました。
【質疑応答について】と【ワークショップの結果について】をアップしました。
2016年12月16日
『現地インフォメーション』ページをアップしました。
2016年12月1日
ホームページをオープンしました。
応募登録の受け付けを開始しました。
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審査講評

審査委員長

 

隈研吾

今回のコンペが、単なる戸建て住宅の建築を目的としたものではないというのは重要なことです。現在、戸建て住宅に対して「自分のことしか考えていないもの」というイメージが生まれつつあるように思います。そして、従来のようなコンクリートのマンションについても、これからの住まいとしてふさわしいものであるかというと、疑問を持っている人も多いようです。そうではない新しい住まい方への希求を、東京のような都会ではなく、西条という水と景観に恵まれた場所で実現させようとしている。これまでの世界の住宅のコンペにはなかった、画期的なコンペであったと思います。
2次審査では、1次審査の際にプレゼンボード上で見たときよりも説明が非常に明快で、今回のコンペの「向こう三軒両隣」という極めて稀な設計条件に対して、それぞれの応募者の理解がはっきりと現れた提案となっていたのが印象的でした。

審査委員

 

乾久美子

戸建住宅と宅地を開発する場合、その宅地がバラバラな個人の集合となることを前提としますが、今回は、戸建て住宅を通して共同体をつくるという試みです。とても画期的なことだと思います。
ただ、建て売りという仕組みを使って共同体を生み、育てるというのは、非常に難しい取り組みだと思います。かたちだけをつくればよいわけでもなく、仕組みだけあればよいわけでもない。この両者が有機的に結びつかないと、共同体という状況は発生しないと思います。
審査委員として、「これなら可能だ」と思える方法論をもつものを選定したつもりです。本当にうまくいくかは、今後の当選者と事業者の取り組み、そしてそれに続く住民の取り組み次第だと思います。竣工し、住民が定着して、共同体の姿が見えてきたときに再び訪れたいと思っています。当選者の方は「この案でよかった」と関係者全員が思える未来を想像しながら頑張ってください。

 

馬場正尊

このコンペは、それぞれの応募者のポートフォリオの中でも、キーとなるプロジェクトとなったはずです。敷地に建物が並ぶ様子を想像すると、今までの日本の住宅地には見られなかった景色が展開されることは間違いない。塀がなく、住宅が敷地や環境を共有し、住民は、家というより街に住んでいる感覚になる風景が出現するのでしょう。
家が家族のためのものになったのが近代であると考えると、その変わり目の時期としての今日、このプロジェクトが存在することには歴史的な意義を感じます。このプロジェクトで魅力的な風景ができ、住宅が完売したら、建て売り住宅の歴史は変わるのではないか。現在、そういうエポックメイキングなものに立ち会っている意識でいます。
当選者の方には、次の時代の試金石をつくる気持ちで柔軟かつタフに取り組んでほしいです。

 

馬郡文平

質疑応答では、環境系の目線から、開口の処理や通風など、このままでの実現は技術的に困難と思われる部分について中心的に質問しました。群棟提案は面白い一方、考慮すべき点が多く、非常に難しい。どの案もよく解かれ、結果的に僅差の審査となり、9案に絞るのは大変難しかったという印象です。選ばれなかった作品にも、感心させられるものが多くありました。
これだけ巧みで個性的な設計が集まり、段階的着工としてまずは各区画ごと2棟を建てていくとなると、すぐ隣の区画の住宅が見えてしまう。当選者の皆さんには、この瞬間から次の戦いが始まっている、と言ってよいのではないかと思います。
とてつもない新規性と規模のプロジェクトですので、完成した際には、住まれる方だけでなく、いろいろな人が見学に来られると思います。住宅という、手で触れるもの、長く住むものをつくるにあたって、ぜひよい作品に仕上げていただきたいと思います。

 

山名正英

このコンペに応募してくださった325組すべての建築家の方々に、お礼を申し上げます。みなさまのご提案は、ぜひ私たちの街の財産として、大切に活用させていただきたいと考えております。熱い思いを受けて、私たちも「糸プロジェクト」の実現に向けて、一層身を引き締める思いです。
本日の2次審査には、西条市の方々をはじめ多くのみなさまにご来場いただきました。これから、9組の建築家の方々と一丸となって、暮らしやすく、誇りをもてる街をつくっていきたいと考えております。

(2017年4月15日、愛媛県西条市にて、文責:本誌編集部)


左、中:質疑応答の様子。登壇する発表者と審査委員。実施コンペとして緻密なやり取りが行われた。 右:公開プレゼンテーションとし、将来の住民や地元の人びとをはじめ、多数の来場者が訪れた。設計者のイメージを可視化するため、1/100の模型提出を必須とし、会場に展示ブースが設けられた。審査会終了後、模型は糸プロジェクト実行委員会に提出され、今後、住民に向けた説明、販売などでも使用される。