結果発表

審査後記


作品例部門審査の様子

古谷誠章(建築家・早稲田大学教授/審査委員長)

審査委員諸氏によるコンペ要項の相談の時に,西沢大良さんから「最初から分煙と言われてスモーカーが隔離される印象がよくない」との切実な呻き声が上がったのだが,「分煙」の文字をよく見ると「煙」を分けるだけで,どこにも「喫煙者を分ける」とは書いてない.そこにどうやら今回の課題に対する解答の分水嶺があったようだ.吸う人,吸わない人に関わらず,いずれもが快適に自分の居場所を見い出すことができる,そんなスペースが求められた.アイデア部門の最優秀賞案は,まったく同じ場所を,吸う人が選ぶことも,吸わない人が選ぶこともあるという等価性を持っていたために,他に一歩抜きん出た印象である.これに比較すると作品例部門では,いずれもがやはり「人」を分ける概念から脱せず,西沢さんの嘆きはもうしばらく続きそうだ.

妹島和世(建築家・慶應義塾大学教授)

最近特にたばこは嫌われています.他人への迷惑は当然考慮すべきことですが,もう少し柔らかな共存があればいいなぁと思うのは喫煙者のわがままでしょうか.空間的な解決を考えられればと思います.

西沢大良(建築家・西沢大良建築設計事務所代表)

アイデア部門は,総じて分煙のための装置や手法に終始する案が多く,空間的なイメージが弱かったのが残念.実施部門は,いろいろな喫煙スペースが試みられていることが分かってよかった.


アイデア部門審査の様子

六鹿正治(建築家・日本設計代表取締役社長)

寛ぎや息抜きに喫煙というきっかけを持てることは,非喫煙者にとっては羨ましくもあり疎ましくもある.ばらつきがありすぎる個人のマナーに頼ることなく,喫煙者も非喫煙者も快適に共存し得る空間をつくることは,国際的にも大きな課題になっている.アイデア部門ではコンセプトの強さが求められる.これに現実の空間技術を注入して,今回応募のあった実施例をしのぐ分煙空間が次々に試みられることを期待したい.

佐藤英治 (設備設計家・イーエスアソシエイツ代表)

喫煙のプラス効果を堂々と強調する空間案をも期待したが……ディスプレースメント(一方向気流による室内空気の置換)方式の案が少し見られたが,もっと大胆に大規模に使った案が欲しかった気がしている.

熊倉一郎 (日本たばこ産業株式会社代表取締役副社長)

たばこを吸われる方と吸われない方との共存のあり方を模索する「分煙」というテーマに対し,935点もの作品応募をいただき,主催者として感謝申し上げます.機械的,空間的,または概念的と多岐に渡るアイデアを興味深く拝見させていただきました.今後も,皆様と共に「分煙」という課題に取り組ませていただき,社会の中でさまざまな解決策が提示・具現化されることを期待致します.